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2024.08.08
紙・段ボール関連分野

徹底解説!~糊の保管に防腐剤を活用しよう~

平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。今回は、営業第2グループが担当いたします。段ボール貼合用糊を安定して使用するためには、適切な保管方法が重要です。なぜなら、糊は管理が不適切だと劣化し、生産に大きな影響を与える可能性があるからです。
調整方法として、ストレージタンクの保管温度の設定変更などがありますが、設定の変更だけでは限界があります。そこで今回は、防腐剤を活用した保管方法についてご説明いたします。本コラムを通じて、糊の保管および生産の安定化に役立てていただければ幸いです。

1.段ボール用糊の劣化について
2.防腐剤とは
3.段ボール用糊と細菌の関係性について
4.防腐剤の選定
5.まとめ

1. 段ボール糊の劣化について
段ボール生産に使用する糊(以下、段ボール糊)の劣化には大きく2種類あります。

① 老化

糊化したデンプンの溶液を冷却すると、糊液は次第に白濁し、水を遊離して不溶の状態になります。ごはんを例に挙げると、炊き立てのごはんはおいしい状態ですが、時間が経つとカリカリになり水にも溶けなくなります。段ボール糊も同様に、製糊直後は粘度や糊化温度が劣化しておらず使用に問題ありませんが、経時変化によりデンプンの状態が悪くなり、最終的には使用が難しい状態になります。

② 腐敗

有機物が微生物の作用によって変質(不完全分解)する現象です。段ボール糊の場合、腐敗や発酵により粘性がなくなります。ごはんにカビが生えたり糸を引いたりするのが腐敗の例であり、防腐剤はこの腐敗や発酵を防ぐために使用されます。

2. 防腐剤とは

防腐剤とは、段ボール糊を安定して使用するための薬剤です。段ボール糊の主成分はデンプンであり、デンプンは非常に劣化しやすい物質です。糊が劣化すると、糊の粘性、接着力が低下し、生産効率や品質に影響を及ぼします。防腐剤の活用により、糊の品質を維持し、安定した生産を可能にします。

3. 段ボール用糊と細菌の関係性について

段ボール工場では、約1000~3000L、温度約40℃の糊をポンプで現場(糊パット)に送り、余剰分をタンクに戻し循環させています。この循環過程で、現場から細菌が糊に混入し、ストレージタンクで繁殖する可能性があります。また、一部の工場では糊パット、糊ロールを水洗いした洗浄水を糊をつくる水に再利用しているため、さらに菌が繁殖しやすくなります。

図1.糊の循環の流れ

現場2日間での糊の細菌数を調べたところ、現場の糊で104個/ml 、洗浄水では106~7個/ml という結果が得られました。
(※三愛オブリ ホームページ)

図2.細菌の数のイメージ図

図3-1現場の洗い水の細菌の写真       図3-2洗浄水に含まれる細菌の写真

(※三愛オブリ ホームページより)

糊の原料には「苛性ソーダ」が含まれており、使用している段ボール糊のpHは11~12、洗浄水はpH8~10です。この違いが、細菌数の違いに影響していると考えられます。

また、細菌と真菌の生育条件に関する情報を整理すると、以下のようになります。
(下記記載数値は、いずれもpHの数値)

真菌の生育条件
1. カビ
– 酸性生育限界値: 約2.0
– アルカリ生育限界値: 8.5
– 最適: 5.0~6.5

2. 酵母
– 酸性生育限界値: 約3.0
– アルカリ生育限界値: 8.5
– 最適: 4~5

細菌の生育条件
1. 一般細菌
– 酸性生育限界値: 5.0~5.5
– アルカリ生育限界値: 8~9
– 最適: 6~7

2. 大腸菌
– 酸性生育限界値: 4.5
– アルカリ生育限界値: 9
– 最適: 7.0~7.5

3. 乳酸桿菌
– 酸性生育限界値: 4.0
– アルカリ生育限界値: 8
– 最適: 6~7

高アルカリ菌の分類
1. 絶対好アルカリ菌
– pH9以上でのみ生育可能

2. 通性好アルカリ菌
– pH9以上で至適生育pHを示すが、pH9未満でも生育可能

これらの情報を基に、環境のpH値が微生物の生育にどのように影響するかを理解することが重要です。各微生物の生育範囲や最適条件を考慮して、適切な管理方法を選ぶことが求められます。

4. 防腐剤の選定

細菌の種類も無数にあり、防腐剤の種類も多数ありますが、効果的な防腐剤を選ぶのは難しいです。しかし、段ボール業界での使用例を考慮すると、以下の薬剤が有力です。

– トリアジン
– ニトロ臭素系化合物
– ヘミアセタール
– BIT(1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オン)

防腐剤は微生物の侵入・発育・増殖を防止し、腐敗や発酵を防ぐために使用されます。アルカリ性環境で効果を発揮する防腐剤を選ぶことが重要です。実際の使用箇所からサンプリングし、効果試験を行うことで、安心して使用できる防腐剤を提供できます。

5.まとめ
弊社では防腐剤以外にも、糊材に関わる全ての製品を取り扱っております。お客様の生産状況を確認させていただき、機械やご使用方法に即したご提案を致します。

お問い合わせ先:営業第2グループ 担当:太田
TEL:052-201-2471
FAX:052-201-2476
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最後までご覧いただきありがとうございました。