平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
以前の「営業第1グループとは」というコラムでは活動内容をご紹介しておりましたが、今回は取扱製品の1つである接着剤についてご紹介していきます。
「接着剤の準備を任されたけれど何を選んだらいいかわからない」「うまくくっつけられないけれどなぜだろう」「そもそも接着剤って何だ?」など接着剤にまつわるお悩みはモノづくりにおいて尽きないもので すね。接着剤の選定となると専門的な知識が必要とされることが多く、1から勉強している時間がないというお声もよく耳にします。このコラムでは弊社が約40年以上、自動車部品業界の生産現場で経験・提案してきた接着剤について、接着剤選定時や工程設計時に役立つ知識をお伝えしていきたいと思います。本記事では接着剤とはそもそも何なのか、どのような種類があるのかを取り上げていきます。
・まとめ
接着剤は簡単に言うと、ものとものをくっつけるためのものです。その歴史はとても古く、紀元前4000年には中国・古代エジプト・古代バビロニアなどで天然アスファルトや膠(にかわ)などの天然素材が接着剤として使用されていました。日本でも縄文時代には漆・松ヤニなど使い、布や木の棒・石を貼り合わせて器や槍を作っていました。人類の進歩とともに天然系接着剤から合成接着剤へ素材の主流が変わったものの、現在でも私たちの身近なところで接着剤は生活を支えています。例えば、子供の工作・衣類・建築・医療・自動車からロケットまで用途に限りはありません。また、接着対象となる材料も紙・木材・プラスチック・金属・ゴム・ガラスなど接着剤の発展とともに広がっています。
接着ってどんな現象?
『接着させたいもの(被着体)』に、接着剤(液体)を塗りつけて、はり合わせたときに
液が固まり(固化・硬化)、被着体同士が固定された状態をいいます。
接着剤では、大きく3つの作用が複合的に作用することで接着すると言われています。
1、機械的結合
機械的結合とは、投錨効果・アンカー効果・ファスナー効果とも言われています。
アンカー効果とは、紙、木、繊維などの多孔質性(小さな穴がいくつも空いている)を持つ材料の場合に、材料表面の微細な凹凸に接着剤が木の根のように入り込んで硬化することで接着力が高まる効果の事を言います。
2、化学的相互作用
化学的相互作用とは、被着材と各接着剤が、共有結合(原子同士で互いの電子を
共有することによって生じる化学結合)や水素結合(2つの原子間に水素原子が
仲立ちとなって入る化学結合)など化学反応によって結合することを言います。
3、物理的相互作用
物理的相互作用とは、接着剤の分子と接着する物の分子とが磁石のように引き合って
接着する考え方で、『分子間引力』・『ファン・デル・ワールス力』とも言われています。
接着の基本的な原理とされています。
このように、接着とは『機械的結合』『化学的相互作用』『物理的相互作用』が
どれか1つではなく、3つの作用が複合的に重なり合って行われています。
接着の第1歩、よく接着するには接着剤によって被着体がよく濡れている必要があります。
全ての接着剤は、液状です。液体から固体に変化することによって接着しています。
例えば、2枚のガラス板を水で十分濡らして重ね合わせてみると、ガラス板は接着剤を
使用しなくても一時的に動かなくなります。つまり、濡れていることでガラス板と水の
分子の距離が非常に近づいていること(物理的相互作業が効いている状態)になります。
接着においては、ぬれていること(接着しようとする被着体に広く平らに拡がること)が
とても重要なポイントになってきます。
接着剤は、被着体との相性が重要です。
接着剤には、様々な種類があります。重要なポイントとして被着体の種類による相性です。
被着体の種類によっては、接着しにくい材料があります。
接着しにくい材料として代表的なのは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、フッ素樹脂などです。
イメージしやすいのはフッ素樹脂です。フライパンに水や油を垂らすと弾くように、
フッ素樹脂に接着剤を塗布しても濡れずに弾かれてしまいます。
弾かれてしまうと前述したアンカー効果など接着の作用が発揮されず剥がれてしまいます。
他にも被着体に表面処理(可塑剤、離型剤等)がされている場合も、同様に接着に悪影響を与える場合があります。
接着剤には様々な種類があります。まず、接着剤はセメントや石膏などの無機系接着剤と
熱可塑性樹脂や熱硬化樹脂などの有機系接着剤といった大きく2つの分類に分けられますが、
自動車業界で使用されているのは、ほとんどの接着剤が有機系になります。
ここでは代表的な有機系接着剤の一部をご紹介致します。
◎ホットメルト系接着剤
ホットメルトとは、溶融状態で塗布し、冷えると固まって接着する接着剤です。
グルーガンやアプリケーターなどの設備を使用して、加熱することで溶融します。
ホットメルトの中にも、オレフィン系・ゴム系・EVA(エチレン酢酸ビニル)系
ポリアミド系・ポリウレタン系などの種類があります。
短時間接着、安全性が高い、取り扱いが容易などの特徴があります。
用途例:天井基材・カーペット嵩上げ材・ダッシュサイレンサー基材・吸音材の貼り合わせ等
◎水系接着剤
水系接着剤とは、樹脂を乳化させ、水に分散させた接着剤です。
別名エマルジョン接着剤とも言います。
ローラーやスプレーガンなどの設備を使用して、塗布します。
水分が蒸発するか基材に吸収されることで接着します。
水系接着剤の中にも、酢酸ビニル系・アクリル系・天然ゴム系などの種類があります。
高凝集力、安全性が高い、水で洗浄可能などの特徴があります。
用途例:シートバック表皮、フロアマット、ルーフトリム貼り合わせ等
◎溶剤系接着剤
溶剤系接着剤とは、溶剤に樹脂を溶かした接着剤です。
ローラーやスプレーガンなどの設備を使用して、塗布します。
溶媒に有機溶剤を使用しているので、防爆仕様の塗布ブースが必要です。
溶剤が蒸発することで硬化し、接着します。
溶剤系接着剤の中にも、クロロプレンゴム系、スチレンブタジエンゴム系、酢酸ビニル系などの種類があります。
初期接着力、硬化が早い、高接着力などの特徴があります。
用途例:ドアトリム表皮・トランクボード表皮の貼り合わせ等
今回接着剤とは何なのか、簡単に説明させていただきましたが、皆様が接着剤について触れるきっかけになっておりましたら嬉しい限りです。実際に生産現場で接着剤を選定するとなると材質の相性・形状・作業環境などポイントとなる部分が複数出てくるかと思います。弊社は日ごろからお客様の工場へ訪問し、生産現場・材料にあった接着剤の提案活動をしております。また接着剤選定のみならず、塗布に必要な設備も取り扱いしておりますので、接着工程構築のトータルサポートが可能です。接着剤へ興味をお持ち頂けましたらお気軽にお問合せ下さい。次回のコラムでは、接着剤のなかでもホットメルトに焦点を当ててご紹介をさせていただきます。
お問い合わせ頂く際は「お問い合わせフォーム」またはお電話にて承っております。
我々が貴社の課題解決に向け、全力でお答えいたします。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。
営業第1グループ
担当:篠田、佐藤
052-201-2471